第4話
「はーい!みんな集まって!」
顧問の先生が手を叩く。
サッカー部なのに顧問は女の先生だ。
それを合図に練習中だった
サッカー部の部員が集まってきた。
「今日からマネージャーが2人も!入部してくれます!」
部員の一斉にざわざわと話し始めた。
「そりゃざわつくよねぇ、
去年卒業して以来マネージャー入ってこなかったもんね。
ほんと助かるよ。
えーっと…」
「私!1年の有村架純です。よろしくお願いします。そしてこっちが…」
「すずです!ひろ、広瀬すずです。
よろしくお願いします!」
しまった。焦ってどもってしまった…。
「えー部員は追い追い覚えていって!
キャプテンだけ言っとくね。
中川大志キャプテン」
顧問に背中を押されて他の部員より一歩前出た。
「中川大志です。よろしくね」
中川先輩が微笑んだ。
微笑んだ、微笑んだ!!
心臓が高鳴る。
顔があげられなくなってしまった。
「大丈夫?」
中川先輩がしゃがみこんで
私の顔をのぞきこんできた。
「だ、大丈夫です!」
逃げ出したいほどに顔が赤くなるのがわかった。
なんだこれ、そんなにどもったのが恥ずかしかったのか、私!
「はいはい、中川はほんと心配性なんだから」
顧問の先生が間に入ってくれた。
「みんな練習戻って〜!
ふたりは、お茶作りから教えるね」
かけ声とともにさっきとは違う顔に変わり、部員は
ボールを追いかけ始めた。
中川先輩は1番大きな声を出していた。
「紺色の彼は優しそうね。安心。」
架純が私に笑いかけた。
「え?」
「え?じゃないよ。好きなんでしょ?
中川先輩のこと。
今も目で追ってたよ」
心の中でストンと何かが落ちた。
「私、中川先輩のこと…」
「今更!まぁすずらしいっちゃ、すずらしいね」
「ええ〜!!!」
私の初恋は、どうやら始まっていたらしい。