yumeshosetsuol’s blog

ただのOLの趣味です。今は2つの別の話を同時進行で更新しています。カテゴリーに分けると読みやすいです。

シーブリーズ

エピローグ(Bad End)

丘の上の海が見える"タカイトコロ"。 一番見晴らしがいい場所にそれはあった。 2月半ばの空気はよく冷えていて、息を吐くと白くなった。 凛とした空気はいつも感じている空気よりずっときれいに感じた。 景色とは雰囲気が合わない真っ黒な格好のふたりが、お…

第27話(Bad End)

それから数日後、いつも通り大志くんからの手紙が届いた。 引っ越してからは母が転送してくれていた。 消印も変わりなく、あのおじいちゃんの店からのものだろう。 でもいつもと違うことがあった。 封筒が青と赤のストライプではなく真っ白だった。 開けてみ…

第26話(Bad End)

最後の方は震えながら、泣きながら架純に話していた。 架純は私に寄り添い、抱きしめくれた。 外はもう明るくなっていて 白んだ空がカーテンの隙間から見える。 大志くんを探しに行った日と同じ色をしていた。 架純は何も言わなかった。 ただ、涙を流してい…

第22話(Bad End)

日本を発って約11時間やっとカナダに着いた。カナダは日本より1ヶ月季節が早いように感じる、とネットに書いてあった通り、肌寒いというより、凜とした冬の空気だ。 ビクトリア大学には生徒に扮して入るつもりだったため、大きなキャリーケースは怪しまれる…

第21話(Bad End)

朝日が昇る前、自然に目が覚めた。 部屋の机は昨日架純との宅呑みの空き缶やお菓子が置いたままだ。 ふたりとも、そのまま眠ってしまったらしい。 出発まではまだ時間がある。 私は空き缶をすすぎ、ごみを片付けた。 架純は一度寝返りをうっただけで気持ちよ…

第20話(Bad End)

朝、目覚めると泣いていた。 また、大志くんの夢を見ていた気がする。 私はカーテンを開けて陽を浴びる。 薬指にはめられた指輪とダイヤが陽に反射して眩しい。 この指輪をはめてもらってもう、4年経つ。 「おはよう、大志くん」 私は写真の大志くんに指輪を…

エピローグ『それから』(Happy End)

私と大志くんの『それから』。無事に産まれてくれた、私たちの赤ちゃんは親バカだけれど世界一可愛い女の子で、静希(しずき)と大志くんが名付けた。名前の意味は、大志くんの『し』と、私すずの『ず』と、誰かが『望』んだ時それが希望に変わるようにと、『…

第20話(Happy End)

よく晴れた22歳の8月14日。私と大志くんは結婚式を挙げた。夏空はには雲ひとつなく、自分勝手だけれどみんながお祝いしてくれている気持ちになった。控え室でウエディングドレスを着て、鏡の前で座って待つ私の周りでは式場のスタッフが慌ただしくもテキパキ…

第19話

待ちに待った2月14日。私はこの日のために買った服とネイルを見ながら何度も何度も姿見の前に立った。高校の入学式の日を思い出した。あの日も制服が可愛くて、何度も何度もこの姿の前でポーズなんかとっていたっけ?あれからもう、4年も経つのか…。 あの頃…

第18話

楽しい時間は早く過ぎていく。かの有名なアインシュタインもそう感じでそれを証明しようとしたけれど、彼でさえできなかった。みんな感じているはずなのにそれを形にすることは難しい。それはまるで気持ちのようだ。先輩を送り出す時、笑顔でいようと決めた…

第17話

私たちは会えなくなってしまう4年分を先に埋めてしまうように、たくさんデートした。兄に買ってもらった洋服は大活躍だ。今日も中川先輩とデートだ。映画を観に行く。待ち合わせ場所で待っている時間も幸せだった。 ノースリーブの水色のワンピースを着て待…

第16話

マネージャーをしているとあっという間に夏休みは過ぎていった。当たり前だが姉と選んだ服はまだ一度も活躍していない。宿題ののことが完全に頭から抜けていた私は、夏休みの終わる一週間前架純に泣きつくと珍しく彼女もため込んでいた。それからは毎日私の…

第15話

夏季大会後の言葉通り、引退後も先輩は時々練習しに部活にやってきた。私は気まずくて、今までどう接していたか分からなくて視線や受け答えがどこかぎこちなくなっていた。心なしか先輩の顔はさみしそうに見えた。 多分、勘違いだと思うけど。夏季大会が終わ…

第14話

奇跡の一回戦突破した次の日に去年優勝した強豪校との試合を控えていた。私は応援しなければいけないという気持ちと中川先輩の留学のショックで感情がぐちゃぐちゃになってしまっていた。架純に何度も何かあったのか聞かれたが部員からも留学の話は聞いたこ…

第13話

夏季大会が始まった。始まる前の円陣を部員がを組み始めるのを横目に飲み物やタオルの準備をしてると吉田先生が「何やってんの!早く!」と、円陣から大声で呼んできた。私と架純は顔を見合わせて笑い、円陣に加わった。「できることは全部やった!3年生は最…

第12話

夏休みも中盤に差し掛かってきた。相変わらずマネージャーに専念している。ルールや部員のこと、けがの時の対処法などをまとめたノートは明らかに宿題より進みが早かった。架純と共有し、一番いいものを作ろうと意気込んでいた。 最近兄の蒼も帰省してきて家…

第11話

夏休みに入り、宿題なんか忘れてマネージャーに集中した。架純も同じだった。あの後すぐに架純の話を聞いて私の話もした。銀のちょうちょのストラップは架純が好きな福士くんからもらったらしい。福士くんが自分の最寄り駅から降りようとしたとき座っていた…

第10話

優しかった日差しは痛さを感じるほど強くなりテストを終え、あとは夏休みを待つだけになった。姉のおかげで初めてのテストの出来栄えはよく架純に、「中学の時赤点で泣いてたすずはどこに消えたの」と驚かれた。中学の時はは姉に教えてもらってなかったから…

第9話

私にとっての初めての夏は先輩にとっての最後の夏なんだ。 中川先輩が言った「違うから」の続きが聞きたい。 あれからあんな特別な会話を交わすことなく梅雨は明け、汗ばむ初夏になっていた。夏休みは目前だ。テスト1週間前になると全ての部活が時間短縮か部…

第8話

「おはよう」先輩が私に笑いかけた。なぜ、先輩が私の家の前にいるのだろう。これは夢なのか。 「どうして…。」「歩きながら、話そうか」先輩が優しく微笑む。あぁ、なんでこんな日に限って寝ぐせ直しは適当だ。 空がほとんど灰色の雲に覆われていつもより低…

第7話

朝日がまぶしい。母が自分の支度をしながら私を起こそうと大きな声で名前を呼んでくる。昨日、あんなに雨に降られたにも関わらず、私の体は元気で、ただ、眠気があるだけだった。漫画の主人公ならばここで風邪をひき親友の計らいで先輩がお見舞いに来てくれ…

第6話

しとしと、と雨が降る。小雨だからか少し霧のようで私を包んだ。 「何してるの、すず、風邪引くよ」 傘を差し出す架純。 「ありがとう」 本当は、もう少しこのまま雨に打たれていたい。 「雨の日はやっぱり部活終わるの早いね」 そうだね、とそっと頷く。心…

第5話

入部して2ヶ月。梅雨前なのにその気配を感じさせなくて、このまま夏になってしまうんじゃないかと思っていた。 でも架純は「梅雨の匂いがする。もうちょっとで梅雨入りだね」と言っていた。 架純は時々ちょっと変わったことを言う。 でも不思議とそれはいつ…

第4話

「はーい!みんな集まって!」 顧問の先生が手を叩く。サッカー部なのに顧問は女の先生だ。それを合図に練習中だったサッカー部の部員が集まってきた。 「今日からマネージャーが2人も!入部してくれます!」 部員の一斉にざわざわと話し始めた。 「そりゃざ…

第3話

新入生を勧誘しようとどの部活も必死だ。 陸上部、美術部、野球部、写真部…。 部活に必ず入らないといけないという校則だからか、同好会もたくさんあった。鉄道とか、昔遊びとか…ニッチなものが多い気がした。 いろんな部活を何日かかかけて体験して見たけど…

第2話

「え?部活?」「そう、部活」 放課後人気のなくなった教室で親友の架純が尋ねてきた。 架純は中学からの親友だ。マイペースで甘いものが好きで芯が強いのにどこか抜けている。私が男の子なら確実に好きになってしまうような魅力的な女の子だ。 同じクラスだ…

第1話

「春、希望の春」そう言って終わった真冬の卒業式から数週間。本当に冬は終わり、桜が満開に咲く希望の春がやってきた。 私は新しい制服に胸を躍らせながら姿見の前で何度も確認して、時々ポーズなんてとっていた。 青いリボンに白いシャツ、紺色と白のチェ…

プロローグ

「このキャップ、交換して使い切ると願いが叶うらしいよ」 「え?」 「広瀬、今日誕生日だろ?はい、これ。交換」 先輩の手にはいつも使っている制汗剤のキャップが握られていた。 先輩は急かすようにそれを握った手を伸ばしてきた。 私は慌てて先輩と同じ制…

【登場人物まとめ】シーブリーズ

■広瀬すず 高校1年生。 大志くんが所属する サッカー部活のマネージャー。 ■中川大志 高校3年生。サッカー部主将。 男女からも支持のある人気者。 ■松岡広大 すずちゃんの幼馴染で腐れ縁。 邪魔する好ましくない人物。 ■有村架純 すずちゃんの中学生からのお…