第3話
新入生を勧誘しようと
どの部活も必死だ。
陸上部、美術部、野球部、写真部…。
部活に必ず入らないといけないという校則だからか、同好会もたくさんあった。
鉄道とか、昔遊びとか…
ニッチなものが多い気がした。
いろんな部活を何日かかかけて
体験して見たけど、
どれもしっくりこない。
疲れて教室で休むことにした。
「わー。みんなもどんどん決めて行ってるよ〜」
架純が携帯を見ながら言った。
入学してからできた友達だろうか。
「架純、そのストラップ可愛い!
こんぺいとう…?」
「そう!すごく可愛くて入学祝いにって買っちゃった」
オレンジ色のこんぺいとうの形をしたストラップが携帯からぷらぷら揺れた。
「いずれ彼氏とかできて、
お揃いのつけたりするのかなぁ?」
「すずにはいるじゃん。広大くんが」
そこでその名前が出てくるとは思わなかった。
「あり得ないよ。だって広大だよ。こーんな小さい頃から知ってるんだから」
私は立ち上がって腰のあたりを指した。
架純は笑ってた。
「広大くんには残酷だねぇ」
何を言っているんだろう。
「広大は姉弟みたいなもんだよ」
「へぇ…」
架純は意味ありげに微笑んだ。
架純は時々何を考えているかわからない。
そんなところも好きなのだけれど。
架純がおもむろに立ち上がり
窓の外のグランドを見た。
「あ!外、サッカー部が練習してるよ!」
私はつられてグランドを見た。
そして目が離せなくなった。
グランドで真剣な顔をして
ボールをがむしゃらに追いかける
1人の男の子に。
「ねぇ、ねぇ!架純、あれ誰!?
知ってる!?」
思わず強く架純の肩を叩いた。
「え、どの人?あの、1番背の高い人?」
架純にはピンときていないらしい。
「そう!あの紺色のTシャツ着てる」
「えー。分からないー。
先輩とかなのかな?」
「中川大志先輩だろ」
後ろから急に声がしてふたりで驚いた。
いつの間にか広大が後ろに立っていた。
「なんだ広大か…。びっくりした…」
「なんだとは失礼なやつだな。
有名だぞ。サッカー部のキャプテンで
いろんな大学から推薦の声がかかってるらしい」
「へぇ…。中川先輩かぁ…」
「まさか、すず」
架純がにやにやしながら私を見た。
「え!ちょっとやめてよ!」
慌てて顔を隠した。
でも無駄だったようで
架純は私の頭をくしゃくしゃ撫でてきた。
「え、なんなんだよ」
広大がつまらなさそうな顔をしてこっちを見る。
「すず、お前どうせ高校もバスケだろ?俺バスケ部入部したから、また練習付き合ってやるよ」
広大が私のドリブルの真似をした。
「ざんねーん。すずはサッカー部のマネージャーになるんです!」
架純が私の肩にポンと手を置いた。
「え!?」
思わず大きな声が出た。
広大も驚いた顔をしている。
「サッカー部!?
せっかくバスケやってきたんだから
どうせマーネージャーするなら
バスケ部にしろよ」
広大が妙に突っかかってくる。
「もうこれは決めてたことだから。
ね?すず。私も一緒に入るから。
じゃあ入部届け取ってきて」
「え、あ、うん…」
私は架純に背中を押されるがまま教室を出た。
「広大くん、残念でした」
「うそだろー。入部届け出しちゃったよ」
広大はその場に崩れ落ちた。
勢いに押された形になってしまったが
私はサッカー部のマネージャーになった。
「中川、大志先輩か…」
なんとも、邪な理由で。