yumeshosetsuol’s blog

ただのOLの趣味です。今は2つの別の話を同時進行で更新しています。カテゴリーに分けると読みやすいです。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

7話

10月も半ばになると、随分と風も冷たく感じられるようになった。「天馬、来週の土曜日は1日空けておきなさい」普段忙しく、一緒に食事をとることなどほとんどない父が、珍しく早く帰ってきたので、久しぶりの家族揃っての夕飯だった。「何かあるんですか?」…

エピローグ『それから』(Happy End)

私と大志くんの『それから』。無事に産まれてくれた、私たちの赤ちゃんは親バカだけれど世界一可愛い女の子で、静希(しずき)と大志くんが名付けた。名前の意味は、大志くんの『し』と、私すずの『ず』と、誰かが『望』んだ時それが希望に変わるようにと、『…

第20話(Happy End)

よく晴れた22歳の8月14日。私と大志くんは結婚式を挙げた。夏空はには雲ひとつなく、自分勝手だけれどみんながお祝いしてくれている気持ちになった。控え室でウエディングドレスを着て、鏡の前で座って待つ私の周りでは式場のスタッフが慌ただしくもテキパキ…

第19話

待ちに待った2月14日。私はこの日のために買った服とネイルを見ながら何度も何度も姿見の前に立った。高校の入学式の日を思い出した。あの日も制服が可愛くて、何度も何度もこの姿の前でポーズなんかとっていたっけ?あれからもう、4年も経つのか…。 あの頃…

6話

お疲れ様です、と周りから掛けられる声に返事をして、天馬は桃乃園コレクションのモデル控え室を出ようとした。 「馳さん、お疲れ様です」 扉の目の前で副会長の近衛が待っていた。 「近衛、お疲れ様」 いつものように天馬は微笑んだが、近衛は表情を固くし…

第18話

楽しい時間は早く過ぎていく。かの有名なアインシュタインもそう感じでそれを証明しようとしたけれど、彼でさえできなかった。みんな感じているはずなのにそれを形にすることは難しい。それはまるで気持ちのようだ。先輩を送り出す時、笑顔でいようと決めた…

第17話

私たちは会えなくなってしまう4年分を先に埋めてしまうように、たくさんデートした。兄に買ってもらった洋服は大活躍だ。今日も中川先輩とデートだ。映画を観に行く。待ち合わせ場所で待っている時間も幸せだった。 ノースリーブの水色のワンピースを着て待…

5話

まだ30分前だというのに、校内放送があった後だからか、体育館にはすでに多くの人が集まっていた。 前の方の席は、明らかに女子生徒の割合の方が多い。恐らく、生徒会長目当てだろう。 「桃乃園ニュース部」と書かれたタスキを付けた生徒たちが、体育館の前…

4話

10月1周目の土曜日。 今日は、桃乃園学院の学園祭だ。 学園祭と体育大会は兼ねられており、4日間あるところ、土日が学園祭のメインである。 学園祭は出店や出し物が多く、学院以外の人が来ても楽しめる内容になっており、体育大会はクラス対抗や縦割り対抗で…

第16話

マネージャーをしているとあっという間に夏休みは過ぎていった。当たり前だが姉と選んだ服はまだ一度も活躍していない。宿題ののことが完全に頭から抜けていた私は、夏休みの終わる一週間前架純に泣きつくと珍しく彼女もため込んでいた。それからは毎日私の…

第15話

夏季大会後の言葉通り、引退後も先輩は時々練習しに部活にやってきた。私は気まずくて、今までどう接していたか分からなくて視線や受け答えがどこかぎこちなくなっていた。心なしか先輩の顔はさみしそうに見えた。 多分、勘違いだと思うけど。夏季大会が終わ…

第14話

奇跡の一回戦突破した次の日に去年優勝した強豪校との試合を控えていた。私は応援しなければいけないという気持ちと中川先輩の留学のショックで感情がぐちゃぐちゃになってしまっていた。架純に何度も何かあったのか聞かれたが部員からも留学の話は聞いたこ…

第13話

夏季大会が始まった。始まる前の円陣を部員がを組み始めるのを横目に飲み物やタオルの準備をしてると吉田先生が「何やってんの!早く!」と、円陣から大声で呼んできた。私と架純は顔を見合わせて笑い、円陣に加わった。「できることは全部やった!3年生は最…

3話

聞き覚えのある、高い声。 振り返ると、正直あんまり会いたくはない人だった。 「君は…」 かつて、目の前のこの店に天馬を呼び出した張本人。 天馬と音を冷蔵庫に閉じ込めた少女だ。 「こんなところで、何してるの?」 「たまたま通りかかっただけだ」 たま…