yumeshosetsuol’s blog

ただのOLの趣味です。今は2つの別の話を同時進行で更新しています。カテゴリーに分けると読みやすいです。

花のち晴れ 天馬side

9話

11月から始まった、世界の茶葉を集めた催し物は、初日から大人気だった。愛莉と約束したのは11月の第一土曜日だ。お茶だけに午後からの方が混むと聞き、午前中に待ち合わせをしていた。家まで迎えに行くと言ったのだが、車を出してもらうから平気だと言われ…

8話

『音が喜ぶことを、考えてしまう癖。もう、やめなよ』異業種交流会の日に愛莉から言われた言葉が、頭から離れない。真っ直ぐな彼女の双眸の奥に映った、狼狽えた自分自身の顔も。何度も耳の奥で響いて、脳裏に浮かんで、その度にどうしようもなさに胸が苦し…

6話

お疲れ様です、と周りから掛けられる声に返事をして、天馬は桃乃園コレクションのモデル控え室を出ようとした。 「馳さん、お疲れ様です」 扉の目の前で副会長の近衛が待っていた。 「近衛、お疲れ様」 いつものように天馬は微笑んだが、近衛は表情を固くし…

5話

まだ30分前だというのに、校内放送があった後だからか、体育館にはすでに多くの人が集まっていた。 前の方の席は、明らかに女子生徒の割合の方が多い。恐らく、生徒会長目当てだろう。 「桃乃園ニュース部」と書かれたタスキを付けた生徒たちが、体育館の前…

4話

10月1周目の土曜日。 今日は、桃乃園学院の学園祭だ。 学園祭と体育大会は兼ねられており、4日間あるところ、土日が学園祭のメインである。 学園祭は出店や出し物が多く、学院以外の人が来ても楽しめる内容になっており、体育大会はクラス対抗や縦割り対抗で…

3話

聞き覚えのある、高い声。 振り返ると、正直あんまり会いたくはない人だった。 「君は…」 かつて、目の前のこの店に天馬を呼び出した張本人。 天馬と音を冷蔵庫に閉じ込めた少女だ。 「こんなところで、何してるの?」 「たまたま通りかかっただけだ」 たま…

2話

学校の外に出ると、まだ日が明るかった。 最近は生徒会で遅くまで残っていたので、明るいうちに帰るのは本当に久しぶりだ。 家を出る時に今日も遅くなると言ってきたので、勿論迎えの車は来ていない。 今から連絡を入れれば、すぐに迎えに来てくれるだろうが…

1話

9月ももう終わりに近付いた。 体育大会と文化祭は10月の1週目に続けてあるので、準備はもう佳境だった。 「馳さん、体育大会当日の動きなんですが…」 「すみません、生徒会長!保護者の誘導で確認したいことが…」 桃乃園学院は学校のイベント行事にも力を入…

プロローグ

空が、泣いている。 しとしとと雨の音が響く中、ベッドに横たわったまま、天馬はぼんやりと天井を眺めた。 秋雨のせいで部屋の中は薄暗く、時計を確認すると起きるにはまだ早い時間だった。 高校の夏休みが終わり二学期が始まった。秋は学校行事が続く。夏休…

【登場人物まとめ】花のち晴れ その後の物語

■馳 天馬 音の幼馴染で元婚約者。IT企業「HASE LIVE」の御曹司。桃乃園学院の生徒会長。 容姿端麗且つ人柄も紳士で、正義感が強い性格。頭脳明晰でスポーツ万能。剣道、柔道、弓道に関してはトップレベルの選手である。白い制服を完璧に着こなす。学院では熱…