yumeshosetsuol’s blog

ただのOLの趣味です。今は2つの別の話を同時進行で更新しています。カテゴリーに分けると読みやすいです。

第10話

優しかった日差しは痛さを感じるほど強くなり
テストを終え、あとは夏休みを待つだけになった。
姉のおかげで初めてのテストの出来栄えはよく
架純に、「中学の時赤点で泣いてたすずはどこに消えたの」
と驚かれた。
中学の時はは姉に教えてもらってなかったからだ。でも、もしあの時姉が寮に入らずにずっと家にいたら
きっと今回のテストの時の様に当たり前に勉強を教えてくれて
もっといい高校に行っていたかもしれない。
そうしたら中川先輩と出会えなかったのか。
人生で初めて自分の頭の悪さに感謝した。
先輩は本当はもっと賢い高校に行けるが
この高校はサッカーにとても力を入れていた。
サッカー部なのに顧問が女の先生で珍しく、かつ強豪校のため
先生が雑誌などの取材を受けることが多い。
サッカーに関しては県内ではなかなか有名なのではないかと思う。
「今日からやっといつも通り部活だね」
架純がうれしそうに笑った。

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やっと先輩のサッカーをする姿を見られるかと思うとわくわくしたが
その反面、この間の出来事を思い出してしまい赤面した。
「すず、どうしたの?」
架純が不思議そうに私の顔を覗き込む。
「架純、あとで相談したいことがあるんだけんど」
架純はもちろん聞くよ、と言って手を握ってくれた。
あぁ、こういうところだ。
架純を信頼できるのはこういうところだと思った。
まっすぐで、頭がよくて、意地悪なことは初めから考えていないから
こういう時、頼りたくなる。
「私が男だったら架純のこと絶対好きになっちゃう」

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嬉しい~!架純は満面の笑みで私に抱き着いてきた。
コトンと何かが床に落ちる音がした。
架純の携帯電話が床に落ちてしまったようだ。
「もう、すぐ落としちゃう」
そう言って拾い上げた時きらりとストラップが光った。

「あれ…?金平糖のストラップじゃなくなってる」
架純はそれを大切そうに手のひらに乗せると私に見せてくれた。

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可愛い、銀色のちょうちょのストラップに変わっていた。
「あんまりこういうの持ってるの見たことないけど
なんか、架純っぽい。すごく可愛い」
そう言うと架純はそれをぎゅっと握りしめて照れて笑った。
「私もすずに聞いてほしいことがあるの!」
そう言った架純の顔は少し照れていた。
雲一つない空に一筋の飛行機雲がかかっている。
それは夏と真夏の境目な気がした。

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