第1話
「春、希望の春」
そう言って終わった真冬の卒業式から数週間。
本当に冬は終わり、桜が満開に咲く希望の春がやってきた。
私は新しい制服に胸を躍らせながら
姿見の前で何度も確認して、時々ポーズなんてとっていた。
青いリボンに白いシャツ、紺色と白のチェックのスカート。
きらきらした夏の海を思い出すような制服だ。
「おーい!すず!遅刻するぞー!」
窓の外から声がした。
声だけでわかる。
幼馴染で腐れ縁の広大だ。
「もう行くよー!」
窓から顔も出さずに返事をして急いでカバンを持った。
部屋を出る寸前もう一度だけ姿見で
制服姿の自分を確認した。
もちろん、この制服だけで高校を選んだわけではないが
ほんの少し、ほんの少しだけ可愛い制服で高校生活を送りたいという気持ちはあった。
「すずー!何してるんだよー!」
広大がさっきよりも大きな声で私を呼ぶ。
「聞こえてるよー!今行くー!」
私は階段を駆け下り、ぴかぴかのローファーを履いて玄関を出た。
『自分の学力で受かる、1番賢いところで、なおかつ制服が可愛い高校』
ただ、それだけの理由で選んだ高校だ。
でも、のちに私はこの高校を選んだことに感謝する。
心の底から感謝する。
だって、先輩と出会えたんだから。